大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)3319号 判決

被告人 井上武夫

〔抄 録〕

一、第一点について。

刑事訴訟規則第五八条第二項には公務員作成文書は毎葉に契印すべき旨規定しているが原判決書の第一葉と第二葉、(記録第三〇二丁と第三〇三丁)間には原裁判をなした裁判官の契印がないこと並びに右第一葉には判決の主文、犯罪事実、証拠および適用法令等重要事項が記載されていること孰れも所論のとおりである。然し、元来裁判書に契印を押捺すべき旨の規定あるは、畢竟裁判書が同裁判をなした裁判官によつて作成されたことを明確にする一方法に外ならないのであるから、契印がない一事によつて常に必ず裁判書としての効力を否定すべきものではなく、他の諸般の状況により当該裁判官作成のものと確認できる場合には有効の裁判書と認めてさしつかえない。而して此の関係よりみれば、裁判書の葉の前後(第一葉なるか第二葉以下なるかの順序)により特に差異ある筋合のものでもない。之を本件についてみるに、原判決書第二葉には第一葉の裁判官正木楯雄の署名の下の判事正木楯雄と刻した角印と同一のものと認められる印影を押捺して文字を加入した箇所があり、又「犯罪事実欄追補分」として以下第六云々と記載するところは、起訴状記載等と比照するも第一葉に「犯罪事実」第五云々と記載するところと内容上連続する趣旨のものであり、更に、記録の丁数を示す「ナンバリング」、(番号印刷器)の数字が第一葉上の302から第二葉の上の303に連続していること等の諸点に鑑みれば、記録編綴の原判決書第一葉と第二葉とは当該裁判官によつて作成された当時より現在どおり連接せしめられて来たに相違ないことを推認するに十分である。

故に、右両葉間の契印の欠缺により所論の如き違法性を来すものではない。論旨は理由がない。

二、第二点の第二について。

原判決が被告人井上武夫に対し刑法第二三五条・第六六条・第六八条を適用して酌量減軽をした上被告人を懲役五月に処したが元来酌量減軽は法定刑の最軽限度を以ても猶重しとする場合になされるものなること孰れも所論のとおりである。然し、たとい酌量減軽をした場合にも必ずしも同減軽の結果の最軽限度に処分することを要するものではなく、同限度と同減軽の結果の最重限度との範囲内において自由に処分するを妨げない。

故に、本件において、原判決が、窃盗罪につき酌量減軽をなした上法定刑の最軽限度よりは重いが猶同減軽の結果の最重限度以上たる懲役五月に被告人を処したことは、単に結果よりみても不必要の減軽手続をなしたというに止まり之により別段所論の如き違法性を招来する措置ではない。論旨は理由がない。

註 本件破棄は量刑不当。

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